小さな頃、ゴジラやウルトラマンが大好きだった僕に、母はよく特撮関係の本を買い与えてくれた。
その本の中に、僕のその後の人生に大きな影響を与えた一冊があった。
「特撮の舞台裏!」という文字が大きく書かれた表紙。ページを開くと、見開きで大きなイラストが描かれていた。
四角い台の上に広がるミニチュアのビル街。
湾曲した大きな壁にはいっぱいに青空が描かれており、天上にはいくつもの照明が吊るされている。
傍から伸びたクレーンの先にはピアノ線で吊るされているジェットビートル。
いちばん印象的だったのはビル街に立つウルトラマンの背中がパックリと割れて、そこから半裸のおじさんがにょっきりと顔を出していたこと。
舞台の下にはカメラマンや照明さん、アシスタントなど大勢のスタッフたちが忙しそうに仕事をしている姿が描かれており、それぞれの役割が解説されているイラストだった。
幼い僕は大変なショックを受けて、こう思った。
《すっげー‼︎‼︎大きくなったら絶対にこの仕事がしたい‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎》
僕はその本をボロボロになるまで何度も何度も読み込んだ。
大きくなるにつれて特撮映画だけではなく、アクション映画や時代劇、様々なジャンルの映画を観ることが好きになった。
18歳になった僕は、映画を作る仕事をするために福島から上京した。
お金がなかったので、新聞配達をしながら映画の専門学校に通った。
仕事がキツく、ミスばかりで叱られることもしばしば。
寝不足で頭がくらくらしながらも、仲間達と映画を作る日々。
そこで、自分の意外な潜在能力に気づく。
学生時代に監督した短編で、僕は西東京映画祭で優秀賞を受賞したのだ。
それまで監督になりたいと思ったことがなかったので、とてもびっくりしたことを覚えている。
学生時代に、もうひとつ大きなチャンスに出会えた。
大映の特撮映画「ガメラ」の現場にインターン生として特撮美術のお手伝いで参加することが出来たのだ。
僕は平成ガメラシリーズ(シン・ゴジラ好きは全員見るべき大傑作)の大ファンだったこともあり、飛び上がるほど嬉しかった。
その時のご縁もあり、卒業してから最初に入った現場が、夢にまで見たウルトラマンの現場だった。
僕は当時放送されていた「ウルトラマンメビウス」の特撮美術助手として働くことができたのだ。
一番の下っ端ということもあり、大変なこともたくさんあったけれど、毎日が感動の連続だった。
ウルトラマンメビウスは世界観が初代ウルトラマンシリーズと繋がっているので、子供の頃から知っている怪獣やウルトラマンが共演する作品だった。
現場で本物のゼットン(ウルトラマンのラスボス)を見た時にはテンションマックスな自分を押さえることに必死だった。
そしてなにより嬉しかったことは、ショッピングモールのおもちゃ売り場で、自分たちが関わった作品の怪獣やウルトラマンに子どもたちが夢中になっている姿を見れたことだった。
「夢が叶ったんだなぁ」という思いと「子どもたちの夢を作る側になれた」という思いとで、幸福感でいっぱいになった。
1日の仕事が終わった後、屋外撮影用の高さ3メートルの大きな平台の上に、大の字に寝転んで夜空を見上げることが好きだった。
星を眺めながらいろんなことを考えた。
2007年にウルトラマンメビウスの地上波放送が終了後、その年以降テレビシリーズは長くお休みすることとなる。
一年間を共にしたスタッフ達は次の現場へと散り散りになっていく中、こんな下っ端の僕にも次のお仕事のお誘いがいくつかあった。
だけど、当時21歳の僕の心は決まっていた。
次の夢を叶えてみようと思ったのだ。
それは「映画監督」になることと「絵本作家」になるということだった。
僕はフリーター生活をしながら作品を作り、自分のホームページに作品をアップする地道な創作活動をはじめることになる。
どこかの誰かが作品を見てくれることを信じて。
創作活動を続けるうちに、技術も少しずつついてくる。
そして作品を通して色々な方と繋がりを持つ機会も増えていき、徐々に仕事としてギャラを頂くようになる。
そうこうしているうちに、バイトをしている余裕がないほど映像やデザインの仕事が忙しくなり、とうとうバイトを辞めて作るお仕事だけでなんとか生活していくことが出来るようになった。
仕事ばかりで作品作りが思うようにいかないことに悩んだり、企画が頓挫して落ち込んだりしながらも、細々と作品を作り続けることを諦めずに続けてきた。
そして昨年、自分が所属する映像制作チームTokyo Cowboys で監督した短編コメディ作品が国内外の多くの映画祭でありがたいタイトルをいくつも受賞することができた。
33歳にしてはじめての海外。はじめてのレッドカーペット。
素晴らしい仲間達と一緒に大きな舞台でトロフィーをもらった。
なんだか、夢を見ているような気分だった。
とある国内の映画祭にてご縁をいただき、今年の4月6日からコメディ短編映画「The Benza」が池袋の老舗映画館のシネマロサ にて上映されることになった。
普段は商業映画がかかっている本物の映画館で、1週間限定のレイトショーではあるけれど、興業として上映されるのだ。
(キネマ旬報にもちゃんと載る♬)
「映画監督になりたい」と志してから10年以上かかってしまったけれど、またひとつ夢が叶う。
…と、ここまで読んでくれたあなたは「え?!最後は宣伝だったの!?ドキュメンタリーだと思ったら青汁のCMだったパターンかよ!(怒)」と思われたことでしょう。
それでは大変申し訳ないので、せめてもの罪滅ぼしとして、なんかお土産になるようなことを書いて終わりにしたいと思います。ほんとにすいません。
僕という人間が、ただ幸運なだけで夢を叶えたラッキーな奴と思われたかもしれません。
いや実際本当に幸運なこともたくさんあったのだけれど。
しかし、ただただあぐらをかいて夢を叶えてきたわけではないのも事実だと思っている。
自分が常に心がけていることをいくつかご紹介してみようと思う。(偉そうにすいません)
・自分から種を蒔くことを辞めないこと。
(長期的なスパンで目的に向かい、チャンスに繋がることに敏感になること)
・仕事をする相手をきちんと見極めること。
(不満や愚痴ばかり言ったり、大きな事を言うだけで自らアクションしない人とは付き合わないこと)
・恥や失敗を恐れず挑戦し続けること。
(失敗ばかりして今も多くの人にご迷惑をかけたり、怒られたりするけれど、トライアンドエラーがなによりも大切)
・未来への想像力を持ち、あらゆる可能性を信じてワクワクしながら生きること。(すぐに結果を求めないこと)
・自分の幸せについて自分で決めること。
(大きな挫折や失敗。落ち込んで鬱々とした気持ちになることも何度もあったけれど、その度に自分の幸せについての定義を考え、ノートに書き出して、そこへのプロセスを明確にすることで現状から希望を見いだす癖をつけた。)
こうして文章にすると、自分何様って感じでとても恥ずかしい。
だけど、僕が実践してきたことを皆さんに見えるかたちにすることも何かしら意味があるのかもしれないと思い、はじめてこんな文章を書いてみました。
駄文長文にお付き合いいただきありがとうございました。
今後の活躍や失敗談をどうぞご期待下さい。
[宣伝!]
4月6日より池袋シネマロサにて、
『コメディボックス!』レイトショーいたします!!
爆笑のショートムービーからほっこり和む作品まで、コメディ作品4本をまとめてお届けします!!
作品
「サイキッカーZ」 木場明義監督
「The Benza」 西坂來人監督 (Tokyo Cowboys)
「おんがえし」 佐島由昭監督
「デッドコップ」 中元雄監督
連日舞台挨拶あり
■4月6日(土)~4月12日(金)
20:50より 1週間レイトショー
■料金=一般1500円 全席指定(チケットは当日の朝より受付開始いたします)
前売鑑賞券(1300円)絶賛発売中!
詳細はこちら
http://www.cinemarosa.net/comedybox.htm
2つ目の夢が叶う瞬間を見に来て頂けたら幸いです!